安倍首相の施政方針演説の中身

 2007年1月26日、安倍首相が衆参両院の本会議で施政方針演説を行った

 夕刊で全文を読んだが、全く物事の本質を見失った分裂した施策であるといわざるを得ない。以下に演説の抜粋を挙げて批判する。

【成長力強化
 「「美しい国」を実現するには、その基盤として、活力に満ちた経済が不可欠です。・・・・・国民が未来に夢や希望を持ち、より安心して生活できる基盤となる社会保障制度を維持するためにも、生産性を向上させ、成長力を強化することが必要です。」と言っている。アメリカの言いなりに市場開放し、大企業の言いなりの施策を行い、生活保護世帯よりも収入の少ないワーキングプアや低賃金の非正規雇用増大を放置して、大多数の国民から未来の夢や希望を奪っておきながら、何を今更言っている。自分達が国民を疲弊させる施策を行っておいて、何が社会保障制度だ。後10年もすれば、現在の年金制度も医療保険制度も生活保護等も全て破綻するだろう。疲弊した国民が増大すれば、年金も払えないのだから将来その人たちは生活保護予備軍となる。とてつもない数になるだろう。仮に年金を貰えても国民年金だけで食っていけなければ、この人たちも生活保護予備軍となるだろう。その日の生活で精一杯であれば、健康管理も定期健康診断も手薄になるだろう。成人病は更に増大し、医療費も莫大な金額になり、健康保険制度も行き詰るだろう。なぜ、そんなことになるのか。全てアメリカの要求であるグローバル化、市場原理主義を言われるままに導入してきたからである。小泉は大企業や一部金持ち優遇策を規制緩和という誤魔化しの表現で旨く国民の目を欺いた。労働者をしゃぶるだけしゃぶって捨て去るようなことを許しておいて、何が国民が未来に夢や希望を持ちだ。それに懲りずに更に「生産性を向上させ、成長力を強化することが必要」と言っている。これは、まだまだ大企業を優遇して国際競争力を維持しなければいけないので労働者はもっと我慢しろと言っているのである。安倍首相は、私は反省もしていないし、もっと労働者いじめをやりますよと宣言しているのである。

何度でもチャレンジが可能な社会の構築
 「特に、私は、勝ち組と負け組みが固定化せず、働き方、学び方、暮らし方が多様で複線化している社会、すなわち、チャンスにあふれ、誰でも何度でもチャレンジが可能な社会を創り上げることの重要性を訴えてまいりました。」と言っている。最近、多様な働き方が出来る社会になったと経済界の人間達は言う。この多様な働き方とは何を意味しているのか。要するに正社員になれずに使い捨て状態の契約社員、パート、アルバイト、派遣労働者。あなた方はこのように色々な多様な働き方が出来るのですよ、と言う。馬鹿じゃないか。自分達が労働者を都合の良いように低賃金で使い捨てられる制度を作っておいて、この多様化を更に推し進めると安倍首相は言っているのである。学び方の多様性とは何か。前の随筆でアメリカとヨーロッパの国の比較を行ったが、アメリカの学校は多様性に富んでいる。特に大学の年齢構成は極めて多様だそうである。何故か。アメリカの労働者は生涯で平均6回転職するそうである。まあ、やり直しも含めて勉強する年齢がばらばらになると言うことだろう。しかし、そんなことが自慢になるのか?そんな社会が国民の望む社会なのか?いつ解雇されるか分からない不安の一生。そんな社会を目指す安倍首相と自民党が引っ張る日本の未来に夢も希望も持てるわけ無いではないか。

魅力ある地方の創出
 「地方都市の商店街の活性化を図り、住みやすく、コンパクトで賑わいあふれる、お年寄りや障害者にも優しいまちづくりを地域ぐるみで進めます。」この部分にいたっては、完全に安倍は嘘つきである。現在、地方都市の商店街の寂れ方はものすごい。特に北九州市の商店街はガタガタである。都市部の商店街だけでなく、近所のちょっとした商店もどんどん潰れた。何故か。商店を保護していた大規模小売店舗法を廃止して、これもアメリカの言いなりに郊外型の大型商店が好き勝手に立地できるようにしたからではないか。自分達が確実に町の商店を潰す施策を行っておいて、何が商店街の活性化を図りだ。ここでも全く反省が見られない。反省と言うより、こんなことも分かってない安倍は本当に馬鹿じゃないのか。愛国心のかけらも無い国賊である。

国と地方の行財政改革の推進
 「その費用をあらゆる世代が広く、公平に分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく、取り組んでまいります。」要するに企業には生産性を向上させ、成長力を強化することが必要で、その為に企業は税制上優遇する必要があるので、税金は消費税を大幅に上げて国民からしゃぶり取ると言っているのである。

教育再生
 「子どもたちのモラルや学ぶ意欲の低下、家庭や地域の教育力の低下といった問題が指摘されています。公共の精神や自律の精神、自分たちが生まれ育った地域や国に対する愛着愛情、道徳心、そういった価値観を今までおろそかにしてきたのではないでしょうか。こうした価値観を、しっかりと子供たちに教えていくことこそ、日本の将来にとって極めて重要であると考えます。」それでは、安倍首相は家庭や地域の教育力が低下したのはどうしてだと考えているのか、こちらから聞きたい。それは、国民が疲弊し、地域の商店を潰したことが一因だろう。小さな文房具屋さんは、子供たちに文房具を売りながら子ども会活動の世話をやいたりしていたではないか。PTA活動でちょっと前から“親父の会”などと言うものが出来た。失業中はちょっと活動したが、普通に働き始めると中々活動するのも厳しい。ましてやこれだけ国民自身が疲弊してくると厳しいだろう。PTA活動自体、夫婦共働きだと非常に厳しい。安倍は何故教育力が低下したのか、考えるべきである。国民のせいにするんじゃない。但し、残念なことにろくでもない大人が巷に溢れていることは事実である。更に気に食わないのは、「こうした価値観を、しっかりと子供たちに教えていく」と言っている。違うだろう。地域や国に対する愛着愛情があるのなら、まず姿勢を正すべきなのは政治家であろうアメリカの圧力の言いなりの国賊地域や国に対する愛着愛情よりも金と出世を愛する政治家ども子供をうんぬんする前に自分たち政治家をどうにかしろ。それもできないのなら、安倍さんは教育力が無いのである。家庭や地域の教育力を論じる前に自分の教育指導力を改善しろ。
 「教育委員会については、期待されている機能を十分に果たしているとはいえません。」そりゃそうだろう。教育委員会に対して、教員の日の丸と君が代への忠誠を確認することしか命じていなければ何も仕事をしないのは当たり前じゃないか。事なかれ主義だからいじめも隠すし不登校も過少申告じゃないのか。真の教育なんか考えない組織は不要だから潰せばよい。

健全で安心できる社会の実現
 「「世界一安全な国、日本」の復活を目指します。」と言っているが、絶対に無理だろう。日本は一旦、手の付けられないくらいの犯罪多発国家になるだろう。何故ならろくでもない大人が多くなった。どこかおかしい。現在、宮崎県庁で幹部をやってるんじゃないかと思うが、大学の同級生はしばしば生協から万引きしたことを公言していたし、子供の同級生なんかでも万引きする者がいるようである。モラルも何も無い。大量のワーキングプア。このまま行けば、モラルもへったくれもないだろう。異常気象と同じで、事件の分野でも連日異常な殺人事件が報道されている。これは始まりに過ぎないのではないか。更に輪を掛けておかしいのが日本の警察。富山県警強姦冤罪事件。ずさんな捜査というよりも完全な見込み捜査で証拠主義を放棄した姿勢は非常に怖い。馬鹿に警察権力を持たせているのと一緒でどうしようもない。無実の罪で2年1ヶ月服役させているのだから、富山県警の罪は重い。これでだれも責任を取らないのだからどうしようもない無責任体質。こんな警察に「世界一安全な国、日本」を期待する方がどうかしている。おめでたい人である。

主張する外交
 「「世界とアジアのための日米同盟」は我が国外交の要であります。・・・・・日本の平和と独立、自由と民主主義を守り、そして日本人の命を守るために、日米同盟を一層強化していく必要があります。・・・・・・在日米軍の再編については、抑止力を維持しつつ、負担を軽減するものであり、・・・・・」安倍が憲法改正とか言って、アメリカからの押し付け憲法を改正しようとしているが、その当人がアメリカの小間使いみたいに振舞うのは非常に見苦しい。何度も言ってきたが、アメリカの言いなりで日本の商店、地方、文化、教育をガタガタにしてきた。今後もその方向を継続するらしい。「在日米軍の再編については、抑止力を維持しつつ、負担を軽減する」と言っているが、アメリカ軍の移転費の日本負担分2〜3兆円の話はどうなったのか。税収が年間40兆円ちょっとしかない中でまたまたアメリカに要求されるままに多額の金を負担するのを隠して、あんたはいったい何をする気なのか。馬鹿にすんなよ。

 あんたは2005年幹事長代理時代に「首相が我が国の為に命をささげた人たちのため、尊崇の念を表すために靖国神社をお参りするのは当然で、責務であると思う」と言っているが、言いごまかしがある。「命をささげた人たち」と言うと死んだ人たちが自ら進んで死んで行ったことになる真実は違うだろう。赤紙が来て、望んでいないのに無理やり「命をささげさせられた」のである。私の父もラバウルだったか、南方に行っている。毎日、戦友がマラリヤでやせ細って死んでいき、連日、椰子の木の下で火葬したという。あんたはいつ靖国神社に参るのか、はっきりしろ。中国、韓国を気遣って参らないのなら軟弱外交である。こっそり既に参ったのか?あんたが本当に信念のある人ならどこかで参るだろうから、それとも参る前に内閣が潰れるか。まあ、世襲政治家3代目のぼんぼんの領域を出てない人物である。

(2007年1月27日 記)

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